お客様
大同機工株式会社 https://www.daido-kiko.co.jp/
ディエクリュデザイン https://decrudesign.theshop.jp
アーティスト 徳永彌生(とくながやよい)様
約100年近く続く水門メーカー。自社工場から出るステンレスの端材をもったいなく思った徳永さんは、自身が学んできた七宝(しっぽう/伝統工芸のひとつ)の技術を用いてテーブルウェアを作り始める。徳永さんの人間的魅力と溢れ出る創作意欲により人気が出始めた。
ご相談内容
アフタヌーンティーブームの先駆者として認められるようになり、ブランドをさらに飛躍させるために新しい商品開発と海外展開の依頼を受ける。
実施内容
オンラインショップ製作 インターネット広告 販路開拓 写真撮影 パンフレット製作 コンセプト設計

目次
1.「この人ならわかってくれるかも」
2. スイッチングコスト
3. 急がば回れの作戦変更
1. 「この人ならわかってくれるかも」

坂元:
そもそものきっかけは、伊藤さん(彌生さんの右腕的存在)から「うちのトップと会ってください」とお話をいただいたことでした。
徳永:
そうです。伊藤がジェトロ(経済産業省外郭団体)の講演会で坂元さんのお話を聞いて、「この人なら彌生さんに合うと思います」と。
坂元:
いまさらですが、なぜそう思っていただいたんですか?
徳永:
私はこれまで何人かコンサルタントやアドバイザーと言われる人たちとお仕事をしたことがあります。こっちは何も分からないから、とりあえず言われた通りにやっていたんですが、なかなか結果が出なくて。
坂元:
そうでしたね。
徳永:
やっていて楽しくなかったんですけど、相手はプロだから正しいんだ、と自分に言い聞かせて...
坂元:
コンサルタントは意図を説明するのに苦労しますし、依頼者は「分からない事を分かってほしい」というモヤモヤがある。お互い平行線になりやすいんです。これはコンサル側が歩み寄るべきことですが。
徳永:
でも、坂元さんはご自分のブランドをお待ちということもありお話が具体的でした。作り手の気持ちをよく理解いただいているし、うちのことを知ろうとたくさん質問してくださいました。
坂元:
私は渋めのものをやってきたので、御社の女性らしい世界観をはやく理解しなきゃと必死でした。

徳永:
坂元さんの作品と雰囲気が全然違いますものね。でもお話をしていて、この方ならうちの世界も理解してくれるだろうと感じたのは確かです。
坂元:
わたしもホームページで御社の作品を拝見して、そのパワーに圧倒されました。競合製品と比べても抜きん出た個性を感じました。それでお手伝いさせていただきたいと思ったんです。
徳永:
そういえば初めてお会いした日。私が4時間ノンストップで話して。坂元さんはずっと聞いているっていう。それが2〜3回続きましたよね。
坂元:
あの滝行のおかげで、彌生さんについて理解がだいぶ進んだのは確かですね。
2. スイッチングコスト

徳永:
坂元さんが出してくださったご提案が「コンセプトから見直す」というものでした。もうびっくりでしたよ。うちには固定ファンもいるのに、えーなんでー、って腰が抜けそうで。
坂元:
御社には個性がありますので、全く違うものに変えましょうということではありませんでした。ただ、もっと明確にしたほうが世の中に伝わりやすい。そのために、いったん「アーティスト彌生」を棚卸しして、再定義すべきと考えました。
徳永:
私はただ好きで作っている人間ですから、「私の創作意欲そのものがコンセプトです」としか言えなくて。でも、坂元さんは「それを他人目線でどう名付けるか」だと仰っていましたね。
坂元:
御社はSNSで多くのいいね!を獲得されています。ただ、その割には売上や話題性が比例しないのが気になっていました。だから、作品のファンなのか、彌生さんの生き方のファンなのか、を分析したかったんです。
徳永:
軸が決まると色々な悩み事がなくなりますよ、というお話もありました。でも、なかなかコンセプトを見直す気持ちにはなれませんでした。
坂元:
スイッチングコストという言葉は、たとえばパソコンを新しいものに買い替える時のコストのことですが、心理的な負担を指す言葉でもあるんです。新しいものへの抵抗感とか、慣れ親しんだものを捨てる恐怖とか。
徳永:
あのときの私は大騒ぎしましたものね。
坂元:
彌生さんは蝶々を追いかける少女のような純粋さで、考えるより先に体を動かしたい方ですから、自問自答っぽい作業はやりたくないんだなと理解したんです。
徳永:
いまなら分かります。でも、当時はまだ気持ちが追いつきませんでした。
坂元:
御社が登るべき山はわかっていましたが、山頂までの登り方を見直すことにしたんです。いったん下山して経路を選びなおすわけですから、私自身もスイッチングコストを感じていました。でも、それを感じた時って、だいたい”やるべき時”で。だから私も頑張ろうと腹を決めました。
3. 急がば回れの作戦変更

徳永:
依頼者側としては、派手で分かりやすい事をやってほしいと思うものですからね。
坂元:
そこで不満を募らせたり、無理やり自分の望む方へ導くコンサルタントにはなりたくなかったんです。企業案件は自分のポートフォリオを充実させることではなく、お客様の自己実現をサポートするものですから。
徳永:
一気にそっちへ向かいましたもんね。
坂元:
はい、いったん彌生さんのやりたい事を実現することにしたんです。 まずはネットショップの構築に取り組みました。すでにネットショップはお持ちでしたが、改めて無料で作れるもので立ち上げました。
徳永:
おかげさまで人様に見せられる立派なショップができて。

坂元:
ネットショップは砂漠のど真ん中に店舗をオープンするようなものですから、集客をしないとお客さんはきてくれません。最初は彌生さんは広告は恥ずかしいと気乗りしませんでした。でも、アクセス数が増えない・売り上げも伸びないことを実感なさって勇気が湧きましたよね。
徳永:
結局やってよかったです。最初は売り込み文句を考えるのが嫌でしたけど。坂元さんがいい塩梅の言い方を考えてくださって。そして次は海外にPRしていただきたいです、とお伝えしたんですよね。
坂元:
正直に難しいかも、とお伝えしました。ヨーロッパに憧れて作ったテーブルウェアを、本場ヨーロッパに売り込んで、はたして相手を驚かせられるのだろうかと...
徳永:
アメリカ人がカリフォルニアロールを日本の寿司屋に売り込むようなものだと。そうではなくて、和の要素を入れたアフタヌーンティーを開発しませんか、とのご提案でしたね。いまでこそ和風シリーズを大々的にやっていますが、当時の私はまだその気になれなくて。
坂元:
欧州の有力なお店やバイヤーの情報を入手して、ひとりづつあたってみましたが反応はいまひとつでした。だからこそ、和柄の開発へとマインドが切り替わることができました。
