お客様
大同機工株式会社 https://www.daido-kiko.co.jp/
ディエクリュデザイン https://decrudesign.theshop.jp
アーティスト 徳永彌生(とくながやよい)様
約100年近く続く水門メーカー。自社工場から出るステンレスの端材をもったいなく思った徳永さんは、自身が学んできた七宝(しっぽう/伝統工芸のひとつ)の技術を用いてテーブルウェアを作り始める。徳永さんの人間的魅力と溢れ出る創作意欲により人気が出始めた。
ご相談内容
アフタヌーンティーブームの先駆者として認められるようになり、ブランドをさらに飛躍させるために新しい商品開発と海外展開の依頼を受ける。
実施内容
オンラインショップ製作 インターネット広告 販路開拓 写真撮影 パンフレット製作 コンセプト設計

目次
4. どうやるかではなく、誰とやるか
5. 「工芸と工業」
6. まとめ
4. どうやるかではなく、誰とやるか

徳永:
さて、じゃあ国内に集中しましょうとなって、まず売上の内訳から考え始めました。
坂元:
一般消費者向けよりも、企業からの開発案件のほうが成約率も費用対効果も高いことが分かってきて。
徳永:
だけど、主にB2C向けに活動してきたのに、なぜか企業から開発案件が入ってくる、という現象があって。嬉しいけどなんで?と不思議な気持ちでした。
坂元:
蝶々を追いかけ続けていたら、カブトムシも捕まえられるようになっていた。でも、どんなスキルで捕まえたんだろう?ってことがわかりませんでした。
徳永:
それに、B2Bを追求するにも私たちの部門には営業がいなくて。本社の営業部隊なら全国にいますけど、水門とテーブルウェアはあまりにも業界が違いすぎるので営業を頼めない。それで、商社や販売会社の力を借りることにしました。
坂元:
WHO NOT HOWという考え方は「どうやるかではなく、誰とやるか」だと。営業マンがいないので商社に頼ることにしました。そして、商社マンたちの営業打率を上げるために、パンフレットの製作に取り掛かりました。

徳永:
完成したパンフレット、本当にお気に入りなんですよ。情報が整理されているし、うちの魅力もわかりやすくて。商社の方たちも使いやすいとおっしゃってます。
坂元:
名前は出せないですけども、誰もがうらやむ夢の企業とのコラボが実現しましたよね。大手百貨店での催事も決まりました。B2B特化、商社、パンフレット、成約率UP、とうまく作戦が噛み合いました。
5. 「工芸と工業」

徳永:
そうやって、B2B案件をたくさんこなすようになって、いろいろと気づくことがありました。機械生産と手しごと。その両方が揃っているのはユニークなことなんだと。
坂元:
自身の強みを考えるきっかけになりましたよね。私としては当初の目的であるコンセプト近辺に戻れたので感無量でした…
徳永:
長旅ご苦労さまでしたね。坂元さんが考えてくださった「工芸と工業」という言葉。シンプルだけとドンピシャだと思いました。
坂元:
ステンレスを生み出す工業と、それをテーブルウェアに変身させる彌生さんの工芸。これまでは、この2つは矛盾するというか、お互いどっちつかずで、中途半端なイメージを残してしまう、ちょっと不幸せな関係でした。でもそうじゃなかった。この二つが揃っていることは付加価値だったんです。

徳永:
お客様側からみれば、工場生産品は品質は安定しているけど、どこか味気ない。いっぽう、手仕事はぬくもりはあるけど、生産スピードや均一性で劣ってしまう。うちはその"良いとこどり”ができる。これはB2Bを深掘りしたからこそ見つけた価値ですよね。
坂元:
そうですね。言葉に関していうと「工芸と工業」はコンセプトと企業理念の中間ぐらいなんです。だから企業向けには有効ですが、B2C向けには”使い手のメリット”を盛り込んだ別の言葉を見つけたいですね。
6. まとめ

坂元:
これまでを振り返ってみて、いかがだったでしょうか。
徳永:
坂元さんが最初におっしゃっていた事。コンセプト、商品企画、販売、PRという順で、上流から取り組んだほうがいいと。今考えると、私っていろんな段階を飛び飛びにお願いしてしまって。でも、ずっと伴走しながら応援してくださったので心強かったです。
坂元:
私もたくさん勉強させていただいきました。彌生さんのような感覚派のアドレナリンの受け止め方といいますか。やりたいことから手をつけると、それぞれが単独の取り組みになるので非効率ではあるんですが。
徳永:
シナジー効果が生まれづらいんですよね。例えば、国内向けオンラインショップの立ち上げと、海外向けPRなんかはまさにそれでした。
坂元:
でも、それぞれ後悔がないぐらいやり切ったのがよかったですね。うまくいかなかった時に、うまくいかない理由を探し続けなくてすみますから。「ここまでやったんだから、もう次に行こう」と吹っ切れますし。

徳永:
私も先にそれがあったからこそ、現実的なお話を聞けるモードになったんだと思います。
坂元:
私も似た気質があるのでわかります。石橋を叩きながら渡る人もいれば、勇気を必要とせず走り出す人もいて。後者の場合は、まず好きなことから実現してあげる。結果が伴わない可能性はあるけど、紆余曲折を経てからセオリーに戻るのが正しいのかもしれません。
徳永:
たしかに試行錯誤の末に、という感じでした。あと、いま不思議とモチベーションが湧くんです。C向けの創作意欲があふれているんですよ。
坂元:
それは嬉しいニュースです。彌生さんはやっぱり自己表現の方ですから。B2Bをたくさんやると、技術力が磨かれるし、商品企画の勘所みたいなのも学べますよね。だから、Bで得た経験をC向けに還元することが大切だと思うんです。
徳永:
そう、意外だったのがBとCが良いスパイラルになっていることで。実際に、いまの私の作品が以前よりもレベルアップしていることを実感してるんです。本当に嬉しい、ありがとうございます。
